- 認知症は誰にでも起こりうること、確実に防ぐ方法はまだないこと
- リスクを下げる可能性のある習慣(運動・食事・交流・睡眠など)
- もの忘れとの違いと、早めに気づいたときの相談先
認知症と「予防」の考え方
認知症とは、脳の病気などによって記憶や判断などの働きが少しずつ低下し、日々の暮らしに支障が出てくる状態をまとめて指す言葉です。年を重ねれば誰にでも起こりうるもので、特別な人だけのものではありません。
ここで大切なのは、「予防」の意味です。現時点では、認知症を確実に防ぐ方法は確立していません。ただ、生活習慣を整えることで、発症のリスクを下げたり、進みをゆるやかにしたりできる可能性が指摘されています。「必ず防げる」ものではなく、「リスクを少しでも下げる」という、肩の力を抜いた向き合い方が大切です。
リスクを下げる習慣
認知症のリスクを下げる可能性があるとされる習慣は、特別なものではありません。体と脳の健康を保つ、毎日の積み重ねが基本です。一つに偏らず、できることから少しずつ続けることがすすめられています。
| 習慣 | ねらい | 暮らしでできること(例) |
|---|---|---|
| 運動 | 脳と体の血流を保つ | 歩く・軽い体操など有酸素運動と筋力づくりを習慣に |
| 食事 | 栄養のかたよりを防ぐ | 野菜・魚なども含めバランスよく、塩分・とりすぎに注意 |
| 交流・知的活動 | 脳に刺激と張りを保つ | 人と話す・出かける・趣味や学びを楽しむ |
| 睡眠・生活習慣病の管理 | 土台となる健康を整える | 十分な睡眠、高血圧・糖尿病などの治療を続ける |
あくまでリスクを下げる可能性がある習慣で、効果には個人差があります。難聴があれば適切なケアを、たばこは控え、お酒はほどほどに。持病のある方は運動の前に医療機関へ相談を。
これらは、フレイル予防(介護予防)と重なる部分が多いのも特徴です。体を動かし、しっかり食べ、人とつながる——この組み合わせが、脳と体の両方を支えてくれると考えられています。難聴があるときに適切にケアすることや、高血圧・糖尿病などの生活習慣病をきちんと管理することも、リスクを下げるうえで大切とされています。
もの忘れとの違い
年を重ねると、誰でも多少のもの忘れは出てきます。気になるのは、それが加齢によるもの忘れなのか、認知症によるものなのかという点でしょう。おおまかな目安として、次のような違いがあるとされています。
| 加齢によるもの忘れ | 認知症によるもの忘れ | |
|---|---|---|
| 忘れ方 | 体験の「一部」を忘れる | 体験「そのもの」を忘れる |
| 思い出し方 | ヒントがあれば思い出せることが多い | ヒントがあっても思い出しにくい |
| 自覚 | 忘れている自覚がある | 忘れたこと自体の自覚が乏しくなることがある |
あくまで目安であり、自己判断はせず、気になるときは医療機関や相談窓口にご相談ください。
たとえば「昨日の夕食のメニューを思い出せない」のは加齢のもの忘れに近く、「夕食を食べたこと自体を覚えていない」のは注意したいサインとされます。ただし、これはあくまで目安です。当てはまるからと不安になりすぎたり、逆に「年のせい」と決めつけたりせず、気になるときは早めに相談することが大切です。
早期のサイン
認知症は、いくつかの小さな変化として現れることがあります。次のようなことが以前と比べて目立つようになったときは、気にとめておきたいサインです。
- 同じことを何度も言う・聞く:少し前に話したことを、くり返したずねる。
- 約束や日付を忘れる:予定をすっぽかす、今日が何日か分からなくなる。
- 段取りが難しくなる:料理の手順がうまく組み立てられない、家電が使いにくくなる。
- お金の管理がうまくいかない:支払いや計算で戸惑う、同じものを何度も買う。
- 意欲や興味の低下:好きだった趣味や外出に関心を示さなくなる。
一つひとつは、疲れや体調の変化でも起こりうることです。けれど、重なってきたり、暮らしに支障が出てきたりしたときは、早めに相談しておくと安心です。ご家族が先に気づくことも少なくありません。
早期発見と相談先
認知症は、早く気づくことに大きな意味があります。早い段階で分かれば、治療や生活の準備、利用できる制度の検討などを、落ち着いて進めやすくなります。本人の希望を聞きながら、これからのことを家族で話し合う時間も持てます。
気になるサインがあるときは、一人で抱え込まず、まずは身近な窓口に相談してみましょう。
- かかりつけ医:ふだんの体調を知る身近な相談先。必要に応じて専門の医療機関を紹介してくれます。
- もの忘れ外来:認知症の診断や相談に対応する専門の外来です。
- 地域包括支援センター:高齢者の暮らしの総合相談窓口。認知症の相談や、その後の支援にも応じてくれます。
- 認知症初期集中支援チームなど:早い段階で本人や家族を支える、自治体の取り組みもあります。
診断やその後のかかわり方については、認知症の備えもあわせて知っておくと、いざというときに慌てずにすみます。
まとめ
認知症は誰にでも起こりうるもので、確実に防ぐ方法はまだ確立していません。それでも、運動・食事・人との交流・睡眠・生活習慣病の管理など、毎日の習慣でリスクを下げられる可能性が指摘されています。そして、もの忘れとの違いやサインを知り、気になるときはかかりつけ医や地域包括支援センターに早めに相談すること——この積み重ねが、これからを安心して過ごす力になります。
参考:厚生労働省。認知症の予防効果や症状には個人差があり、確実に防ぐ方法は確立していません。気になる症状があるときは医療機関や地域包括支援センターにご相談ください。
年を重ねても、自分らしく穏やかに。その毎日を、あんしんくらしがそっとお手伝いします。